ニューモシスチス肺炎(PCP:Pneumocystis pneumonia)

  • 以前Pneumocystis cariniiと呼ばれていた、真菌による肺炎。(原虫ではない。)
  • ヒトに感染する病原体はPneumocystis jiroveci(ニューモシスチス・イロベチー)と名付けられている。
  • 免疫不全宿主(免疫抑制療法・化学療法施行患者、臓器移植患者、AIDS患者、ステロイド投与中、血液悪性腫瘍、膠原病などの自己免疫疾患)に発症する。
  • 特にT細胞性免疫低下状態(AIDSやATLなど)
  • AIDS患者ではCD4+細胞が200/mm3以下で発症。AIDS患者の臨床経過中、少なくとも80%の患者がPCPを発症。
  • 間質性肺炎にステロイドなどの免疫抑制剤が投与されているときに発症することもあり、間質性肺炎の増悪の他に鑑別に入れる必要あり。
  • リウマチに合併する広範囲すりガラス陰影を認めた場合、PCPもしくはMTXによる肺障害を鑑別に挙げる。
  • 10%にCMV肺炎(サイトメガロウイルス性肺炎)を合併。他、Tb、NTM、真菌など。内因性感染の再燃 or 経気道感染もある。
  • 主訴は、呼吸困難、乾性咳嗽、発熱。特に呼吸困難は著明で90%以上の症例で認められる。
  • 病理では肺胞内の好酸性・泡沫状滲出物+肺胞壁肥厚→びまん性肺胞障害(DAD)。
  • LDH↑、KL-6↑、β-Dグルカン↑(診断能が高いがPCPに特異的ではない。200pg/ml以上で特に有意)。
  • 低アルブミン血症が予後不良因子。
  • 確定診断はBALF、TBLBなどからP.jiroveciiの菌体を検出。
  • 治療は抗菌薬(ST合剤)、ペンタミジン。
  • AIDS患者は緩徐に発症することも多く、症状も比較的軽度。肺内の病原体が非常に多く、喀痰や気管支肺胞洗浄液中に菌を同定することが比較的容易。
  • 非AIDS患者は急激に発症し、呼吸困難も強い。肺内の菌量が少ない、同定が難しく、確定診断が困難。
  • 最近では感度、特異度ともに高いPCR法による診断も行われる。

    画像所見

    • 両側対称性、上肺野の肺門側優位のモザイクパターン(病変部と非病変部の混在を示唆)を呈するすりガラス影(肺胞内浸出物を反映)。胸膜下は保たれる。
    • 時にコンソリデーションを示し、好中球性炎症or ARDSにより生じるとされる。
    • 汎小葉性の分布を示す。
    • 時間が経過すると、小葉間隔壁肥厚や網状影(crazy-paving pattern)がすりガラス影とともに見られる。

    ※他の肺炎に比し、すりガラス影が高頻度。小葉中心性陰影、浸潤影はないと思ってよい。
    ※両側のすりガラス影を見たときに、疑い、レポート記載することが大事。
    ※時に見られる所見:気管支壁肥厚、小葉中心性陰影、嚢胞、浸潤影、結節影、線状網状影など(これらの所見から診断できない。)
    ※胸水、肺門リンパ節腫大(稀と言われるが18%ある)

    症例 50歳代男性 腎移植後、息切れ

    引用:radiopedia

    両側中枢側および上肺優位にモザイク状のすりガラス影を認めています。

    ニューモシスチス肺炎(PCP:Pneumocystis pneumonia)を疑う所見。PCRにて確定診断されました。

    症例 動画によるPCPの2症例

    AIDS患者における画像の特徴
    • 20-35%(10-30%)程度で嚢胞あり。両側性、多発性。上葉優位
    • 嚢胞が見られる場合、気胸を伴うことあり。逆に、AIDS患者の気胸を見たときには、ニューモシスチス肺炎を疑う。
    • 亜急性〜慢性(2-8週)の経過で発症。一方でnon-HIVは急性。
    • AIDS患者の60%がPCP発症で発見。
    • non-HIV-PCPは死亡率35-50%。HIV-PCPは死亡率10-20%。

    症例 HIV陽性患者のPCP画像所見2症例

    鑑別診断

    など

    関連:二次小葉と小葉から見た所見の分布

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